「クイズAI開発プロジェクト」前編 クイズを愛する2人がタッグを組んだ前代未聞のプロジェクトとは ― In the Pipeline 記憶×テクノロジーが拓く未来の地平 ―

2022.03.10 「クイズAI開発プロジェクト」前編 クイズを愛する2人がタッグを組んだ前代未聞のプロジェクトとは ― In the Pipeline
記憶×テクノロジーが拓く未来の地平 ―

キオクシアが有する現在の技術または近い将来の開発が見込まれる技術を用いれば、SFでしか見たこと、聞いたことのない世界が実現できる! その無限の可能性を国内外の有識者とともに想像力たくましく妄想することで、近未来のリアルなライフスタイルを予測する。

運命に導かれて出会った2人のクイズ・ラバー、クイズ王・伊沢拓司とキオクシア・市川尚志。彼らの情熱はやがて、クイズを単なるエンターテインメントから未来の社会に貢献する資産へと変えていく———。この連載の前編では、2人の出会いからその後のタッグを組んでの活躍、そして成長した2人がついに手を携えて取り組む「クイズAI開発プロジェクト」の発足までを追う。

アマチュアクイズ界のパイオニアと天才中学生、運命の出会い

「出会ってから早12年。まさかいま、こうして一緒にクイズの仕事に取り組んでいるとは。感無量ですね!」

そう口にしながら嬉しそうに、そして親しげに笑顔を交わすのは、日本を代表するクイズプレーヤーとして人気の伊沢拓司さんと、キオクシアの市川尚志。12年前の当時、市川は複数のクイズサークルに所属し、クイズ大会の企画・運営に熱中するクイズ・ラバーであり、伊沢さんはまだ中学3年生のクイズ研究部員であった。中学生にして高校生向け競技クイズ大会で優勝した天才少年として、市川の参加する社会人クイズサークルに姿を現したのが出会いのきっかけだったという。

対談から、まずは二人の「これまで」を振り返ってみよう。

伊沢:市川さんが当時参加していた、グランドスラムという社会人サークルにお邪魔したのが最初の出会いでした。

市川:あのとき、僕はもう噂を耳にしていたんです。何しろ中3で高校生の競技クイズナンバーワン決定戦である『高校生オープン』に優勝したっていうんだから、驚きで。

伊沢:そこで初めて市川さんとお近づきになって、その後「うちのサークルに来ないか?」と誘っていただいた。それが、埼玉で活動する『玉Q』というクイズサークルでした。

市川:そうだったね、伊沢との出会いは。おっと、伊沢「さん」との出会いは。

伊沢:いつもどおり、伊沢でいいです(笑)。玉Qは和気あいあいとしていながら、少数精鋭でトレーニングするみたいな雰囲気でした。でも呼んでもらったのはいいけれど、最初はちっともボタンが押せなかった。1日通して20問くらいしか答えられなかった。

市川:玉Qで1日に解くクイズ問題数が、大体700~800問ある中でだよね。

伊沢:はい。僕はすでに高校生とか大学生の大会では大体トップを取れるようになっていたのに、「社会人はやっぱりレベルが高いな! 」というのが実感でした。社会人が勉強する秘蔵の資料みたいなものを見せてもらって「このレベルまでやらないとナンバーワンになれないんだ!?」と愕然としたり。誰もが妥協のない世界でやっているのを見て、自分もこのレベルで強くなりたい! と思ったのが最初でした。そこで学んだことで、半年後の日テレの高校生クイズに勝てたんです。

市川:すごいと思ったのが、伊沢は社会人プレイヤーが適当に言ったことを、一を聞いて十を知るというか。すぐ身につけてしまうんだよね。

伊沢:いえいえ。市川さんには、僕が大学に行ってからもずっとお世話になりっぱなしで。

市川:サークルもそうだけど、大会もいろいろ一緒にやったよね。

伊沢:やりましたね。そもそも、市川さんがクイズ業界においてどうすごいかって、いまに続くメジャーな大会を幾つも立ち上げてきた方なんです。学生クイズの代名詞的な存在の大会である『abc』もそう。800〜900人の学生が一堂に会するような大会を一から立ち上げたんですから。

市川:まあ、いろんな人の協力があってこそ、ですけどね(笑)。

伊沢:市川さんが立ち上げた大会は、一大ブランドになってますから。『新人王・早押王』なども代表作のひとつでしょう。おもしろいのが、『新人王』というクイズ歴が短い人向けの大会と、『早押王』という歴が長い人向けの大会を同じ日にやるんですが、一方の参加者は他方に参加できないので、参加者が互いの大会の運営を互いが助け合うんですよね。そんな互助システムをつくったのも市川さんでした。あと、今盛り上がっている大会だとと『AQL』という全国規模のクイズリーグも市川さんが生みの親です。

市川:それも、皆さんの協力あってのことなんですけど(笑)。伊沢も含めてね。覚えてるのが、伊沢は高校生ながら『新人王・早押王』でメインに近いスタッフを引き受けてくれたよね。それも含めてクイズばかりの高校生活を送りながらも、途中からしっかり切り替えて一生懸命勉強して、本当に東大に入った。びっくりしたんですよ。

伊沢:ですよね。僕は当時、クイズしかやってなかったから(笑)。

市川:でも、本当に受かっちゃった。で、伊沢が合格直後の『新人王・早押王』をやるときに「大会、半分仕切ってよ」と頼んだ。僕がトップをやるから、伊沢は副大会長をやってくださいって。

伊沢:攻めの人事だと思いました(笑)。

市川:大学1年生に副大会長をやってくれと。年上の社会人も含むスタッフ80人を統率してくださいと頼んだよね。

伊沢:大会運営とかも、市川さんが仕切っているのをずっとそばで見てきたことが勉強になりました。市川さんのすごいところって、立ち上げと運営の両方ができるんですよね。普通は発案が得意な人と、それを継続しながら指揮を執るのが得意な人ってタイプが分かれるように思うんですが、それがひとりの中に入っちゃってる。しかも、それを社会人として働きながらやってる。そんな人はほかにいないです。自分がQuizKnockという会社を興すうえでも、とても参考になりました。

市川:ありがとう。でもどう考えても、会社を立ち上げる伊沢のほうがすごいです。

伊沢:そんなことないですよ。

市川:ある会社の人事の方に言われたことがあるんだけれど、会社を立ち上げるとか、会社の運営をするのももちろん難しいけれど、素人の大会を報酬なしのスタッフを巻き込んで成功させるのは別の意味で難しいマネジメントだよね、と。

伊沢:クイズの大会って、基本的にギブ・アンド・テークと言われていて、自分が遊ぶ分、人が遊ぶのも手伝おうという仕組みになっているんですね。そんな手弁当スタイルだったのを、みんながかなり平等な形で楽しく思える仕組みづくりによって動かしていたのが、まさに市川さんだった。

市川:参加する人も仕切ってる人も含めて、なるべく全員がやっていて楽しいなっていうふうに思えないと、意味ないじゃないですか。それを一生懸命、アマチュアの場で考えられたっていうことが僕の経験値を上げてくれた。

伊沢:ピープルマネジメントっていうのは、市川さんと一緒にやってきて、すごく勉強になったことです。

クイズなしには生きられない! 深淵なるクイズの魅力とは?

目を輝かせて、クイズのことを生き生きと語り合う伊沢さんと市川。世代を超えて、立場を超えて、同じクイズ・ラバーとして共有してきた体験はまさにプライスレスなのだろう。そんな2人は、そもそも何がきっかけでクイズと出合い、のめり込んで行ったのだろうか? 「クイズなしには生きられない!」と嬉しそうに言い切る2人に、その魅力を尋ねた。

市川:ところで、伊沢がクイズを始めたきっかけは何?

伊沢:開成中学クイズ研究部に入ったのがきっかけでした。クイズを通じていろんな知識がつくし、さらに人と戦えるのが楽しいなと。

市川:クイズって、やる側とつくる側っていう2種類があると思うんです。僕は小学生の頃、ウルトラクイズにすごいハマっていたので、学校でウルトラクイズごっこをやるわけですよ。もちろん、小学生がやるから大したことないし、内容も破綻しているんだけど、クイズを通じてものを作るっていうのがとにかくおもしろくて。

伊沢:じゃあ結構、作るほうが最初からあったんですね?

市川:そう。その後、高校生のときに早押しクイズに出合って、おもしろさにハマった。早押しクイズって、まず知識がなきゃいけないのは当然だけど、1つのクイズ問題文に対してどこで止めて答えるかって、可能性が無限大じゃないですか。それを何かのルールと組み合わせると、また新たにおもしろいゲームがつくれる。

伊沢:早押しクイズって、1個の知識で1個の問題が解けるというわけではないんですよね。早く押すためには、答え以上のことを知ってないといけない。すごく良くできたゲームですよね。

市川:だから単純に点数を競うだけじゃなくて、アイデアを加えてみる。例えばabcで行われていた「10〇10×」とか。

伊沢:あれは市川さんが最初に考えたアイディアでしたね!

市川:10問正解すると勝ち、10問誤答すると負けっていう単純なルール。つまり9回間違えても10問正解すれば勝てるっていうルールで、「正解するのが前提」だった早押しクイズを、極限まで早く押せるタイミングを突き詰める「確率の競技」に寄せた感じ。

伊沢:みんな、賭けに出るわけですよね。確率50%なら勝負するぞ! っていうやり方をするわけで。

市川:あるいは逆の例だと「AQL公式ルール」では、1回間違えるとポイントが1に戻っちゃう。さらに「全員の得点を掛け算するチーム戦」っていう複雑な要素も絡んでくる。

伊沢:早押しクイズ自体はお酒の原液のようなもので、市川さんがそこに新しいルールを加えてカクテルをつくっていくというか。いろんなアレンジができるんですね。

市川:僕はそこが一番好きなんです。

伊沢:一方で、クイズそのものの楽しさとなってくると、それを通していろんな人の趣味を知ることができたりするというのもありますよね。自分のそれまで知らなかった領域が、クイズで開けてくる。

市川:そう。クイズの楽しさには、単なる競技だけじゃなくて、色々な人の知識が掛け合わさっていくところでもある。

伊沢:クイズを通して自分が無自覚だった自分自身の知にスポットライトが当たると、自分の知識に対する肯定感が与えられたり、学びに繋がったり。クイズはゲームそのものとしてもおもしろい、というのがまず最初に来て欲しいなとは思うんですが、そこにプラスαでいろいろと派生して出てくる効能というものもある。僕としては、QuizKnockはクイズ文化へのリスペクトを根幹としつつも、プラスαの効能にも注目して、クイズと教育を掛け合わせたサービスにしたいなと思っているんです。

タッグを組んで「クイズAI開発プロジェクト」発動!

喜びも、人生も、そしてかけがえのない仲間も、すべてクイズを介して分かち合ってきた2人。クイズ・ラバーの会社員だった市川と、中学生ながら高校生クイズ王で優勝した伊沢さんはいま、——キオクシアの市川尚志とQuizKnockの伊沢拓司として——手を携え、「クイズAI開発プロジェクト」を推進させている。その経緯と展望を紐解いてみよう。

市川:いつしか伊沢はQuizKnockを立ち上げて、クイズを本業とする会社の社長となった。

伊沢:市川さんはその間もAQLをはじめとするいろいろなプロジェクトを手がけて、クイズ界を牽引されてきましたね。そしてついに、2人にとって初のオフィシャルなコラボレーション仕事を立ち上げてくれた。それは「一緒にクイズAIをつくりましょう!」という一本の電話から始まった(笑)。

市川:そう。そもそもこのプロジェクトは、社内の従業員エンゲージメントを目的とした、社員の主体的な取り組みを推奨する活動の中でクイズをテーマに企画したものです。当初は社内交流を深めるためのサークルでもつくろうかな、くらいの気持ちでいました。

伊沢:最初からドカン! じゃなかったんですね。

市川:実はスタート時には、クイズAIなんていうアイデアはまだなかった。まず社内でクイズ好きを探してクイズ大会をやってみよう、くらいのものでした。『クイズキオクシアカップ』を非公式でオンライン開催したり。といっても、実はそのときに優勝した社員が、いまクイズAIの核をつくってるんですよ。

伊沢:すごい! そこから繋がるわけですね。

市川:正直、最初はクイズを使って横の繋がりを作ろう、キオクシアでクイズ実業団を作ってAQL(団体戦)に出ようとか、そのくらいしか考えていなかった。そこからいつのまにかAIになるんですね(笑)。

そもそも、キオクシアは半導体のフラッシュメモリを四日市の巨大工場で作っている会社なんです。そのなかで、100個作ったらそのうち何個を製品として出せるかっていう「歩留」という概念があります。それを高めるにはどんな作り方をしたらいいのか。半導体の作り方、プロセスのところを改善するため、作る前に「仮想実験」をするためのシミュレーションを、僕は仕事としてやっているんですね。

伊沢:なるほど。何%が使える製品になるかというところを改善するわけですね。

市川:そう。そしてシミュレーションをやるうえで、AIや機械学習っていうのは欠かせない技術なんです。でもふと、キオクシアがAI技術をやっているという事実が、社外の人たちには全然知られていないということに気がついた。知られてないから、そもそも新入社員でAIをやりたくてうちに来ようっていう人も現れないわけで。そこで「じゃあクイズAIでもつくって、アピールしませんか?」と。

伊沢:なるほど。クイズのレクリエーションとAI開発が、そこでやっと結びついたんですね。

市川:「クイズAIをつくろうと思うんだけれど、キオクシアだけじゃできない。伊沢さんっていうクイズセレブがいて、彼の会社と一緒にやったらおもしろいのでは?」ということで、いよいよ例の相談の電話をしたという流れだったんだ。

伊沢:なるほど、クイズセレブ(笑)。でも市川さんはずっと半導体をやられてるイメージだったから「え、AI !?」と思って驚いたんです。でも、電話の時点ですでに相当できてましたよね、骨子みたいなものが。

市川:そうですね。

伊沢:クイズに答えるAIみたいなものは、これまでも存在していた。ところが市川さんが考えているのは、そこじゃないと。問題を作るほうだと聞いて、唸らされたんです。

市川:もしも解くほうのAIでやるんだったら、「早押しクイズAI」だなと思ってました。早押しは、どこで押すと何%ぐらい正解できるということを、AI解析できるなと思っていて。これができれば、将棋の中継みたいに早押しクイズ観戦者がそこで押すのがすごいのかを理解するアシストができる。でもやっぱり、メインでやりたいのは問題を作るところだった。

伊沢:解くほうをやるためには、まず作るほうの頭が必要になってくる。そこまで考えていたんですよね。

市川:それにしても、伊沢には驚かされたよ。電話した直後に「それをやるんだったらTwitterアカウントをつくって、時事問題を自動で投稿したらどうですか?」って言われて。さすが、パッとアイデアが出てくるなと思って。

伊沢:多かれ少なかれ未完成なものの完成度を上げていく形かなと思ったし、作問についても「こう!」という鉄則があるわけじゃないから、逐次フィードバックを得られたらおもしろいだろうなと思って。また時事問題だとニュースという明確なソースがあって、しかもまだ誰もクイズ問題にしていないネタが日々アップデートされる。AIならいま起きたばかりのことを誰よりも早くクイズにできるから、そこに優位性があると踏んだんです。

市川:最初の電話で、コンセプトの8割、9割が決まったよね。

伊沢:クイズとAIですぐにここまで辿りつけたのは、市川さんの経験があってこそです。それこそ昔、僕と市川さんが入っていたmixiコミュニティで時事問題の作りあいとかをしましたよね。毎月何問みたいなノルマがあって(笑)。

市川:1人で毎月最低10問だったっけ?

伊沢:そう。それぐらい時事クイズというのは、新しく作らなきゃいけないものなんですね。旬がすぐに過ぎてしまうから、作り続けないといけない。だからAIに向いていたんです。

市川:その後、社内の折原という、「#世界新記憶プロジェクト」で手塚治虫さんが描いた絵をAIで再現するというのを仕切っている者に相談しました。「課題はあるけど、できるんじゃない?」と言ってもらえた。折原は現在半導体生産改善のためのAIを手がけていますが、元々は自然言語処理も専門としていた人で。言葉を処理して、クイズを作るというところで助けてもらおうと思ったわけです。

伊沢:Word2Vecとかを使って?

市川:さすが、動画の題材にしているだけあって、よくご存じ! ほかにも社内のキーパーソンたちが賛同してくれて、これはいけるなと思った。人がまず動いて、企画がOKになって、ついにクイズAI開発プロジェクトが発動した。

伊沢:市川さんのプロジェクトだから、安心感がありました。「やりましょう!」 の決定を伝えるのも早かったですよね。

市川:そう、伊沢からの返事、むちゃくちゃ早かった。AIを開発するうえで、ユーザーの目線はすごく大切で、QuizKnockがパートナーになるということは社内的にも非常に説得力があった。またQuizKnockというパートナーにはアカデミックなバックボーンをもった学生たちが集まってますよ、さらに世の中ですごい人気なんですと言えた。

伊沢:作った後のプロモーションまでできるぞと。

市川:それも大きかったね。キオクシアという社名はまだまだ知られていなくて、このクイズAI開発を通じて広く世の中に知ってもらえると言えれば、社内を説得しやすくなるなと思っていた。

伊沢:びっくりしました。本当に通るんだと思って(笑)。

市川:動き出すと、今度は人が集まってくるんですよ。例えば、教育事業をやってみたかったという人。「QuizKnockさんが教育をやっているから、そこと一緒に作ったAIで、何か教育につなげられたらおもしろいですね」って。それから「QuizKnockの動画、いつも見てます!」という純粋なクイズ好き(笑)。そうやって集まったメンバーに、クイズの作り方を一生懸命教えたんですよ。AIを作るには、教師データっていう見本のようなものが必要だから。

伊沢:そこから学ばせないといけないんですね。

市川:そうなんです。が、学ばせるためのデータが不十分で。内部で作るしかないとなったときに、QuizKnockの作り方はこうだよっていうマニュアルをいただけたんですよね。

伊沢:はい。うちで作ったやつ。僕も書いてるやつですね。

市川:「時事問題はこう作るべきだ」「こういう切り口でいくべきだ」みたいなものを渡して、実際に作らせてみて、直してあげて。あと、日本で4人目のKaggle Notebook Grandmasterとなった中(なか)という者も、AIの開発において力を貸してくれることになった。そんなこんなで、プロジェクトを回すのに十分な人財が集まってきて、今にいたる訳です。

伊沢:うちではそれこそ「東大王」に出ているメンバーだったりとか、クイズへの感度が高い若手メンバーがプロジェクトに入って、クイズ作りのポイントを指導してます。リソースとして、“朝Knock”と呼ばれる、うちが毎日連載してる時事クイズを使ったりしながら。クイズをたくさん作る仕事をしながら見てきたのは、せっかく作った問題が埋もれていくことなんです。それをどう活用していくかっていうのは大きなテーマだった。そんなときに、(AIの)学習の足しにQuizKnockが作った問題を使ってもらえるんだったら、それはすごくいいアピールになるし、うちの問題に再注目してもらうきっかけにもなるなと。

市川:お互いに良かったよね。世の中ではアマチュアも含めて、日々すごい量の問題が生み出されているじゃないですか。毎月10人程度が参加する小規模クイズサークルである「玉Q」だけでも、年間1万問は作られていると思う。しかも日本にはクイズサークルが、AQLに参加しているところだけでも300ぐらいあるわけです。

伊沢:合わせると、年間100万問は間違いなく超えてるはず。

市川:ところが、それがどんどん埋もれていってるんです。

伊沢:もったいないですね。となったときに、新しい使い道としてAIに“食わせる”っていうのは斬新だと思いました。

市川:おもしろいよね。もちろん、それをやってくうえでは、我々はAIのもとになる「クイズ」を創る「クイズクリエイター」たちに敬意を表することが必要だと思っています。クイズ業界自体がうまく回ってこそ、教師データが増えていくわけで。今回、アマチュア大会のabc、AQLをキオクシアとして支援させていただくこともセットで提案しました。業界にちゃんと還元していくために。

伊沢:QuizKnockも、ベースにはクイズ業界が作ってきたクイズ文化があるわけだし、そういうものへのリスペクトとか還元をちゃんとやっていきたい。それもあって、まず恩恵を受けるのは、クイズプレーヤーであってほしい。

市川:同感です。これからも、一緒にアマチュアクイズ界も盛り上げていきたいね!

掲載している内容とプロフィールは取材当時のものです(2022年1月)