ビッグデータの活用が人々の生活とビジネスを支える。記憶媒体がもたらす気象データ活用の革新

2022.12.26 ビッグデータの活用が人々の生活とビジネスを支える。記憶媒体がもたらす気象データ活用の革新

人間の生活は、日々の天気と無縁ではいられない。ビジネスも同様で、気象データに基づいた電力需要予測を行ってオフィスや工場の停電リスクを軽減したり、天気に応じて衣料品や食品・飲料、家電など小売店の在庫量を調整したりするなど、気象のビッグデータのビジネス活用が各業種で加速している。

こうした気象データのビジネス活用で注目を集めるクロステックのひとつが、気象情報サービスを展開するウェザーニューズ社の「ウェザーテック(WxTech)」だ。そして、天気予報の予測精度が近年上がってきた背景には、膨大な気象データを活用できるクラウドコンピューティングの進化がある。

このビッグデータのシステムを支えるのが、大容量・高速・低消費電力を実現するフラッシュメモリ・SSD(ソリッドステートドライブ)のリーディングカンパニー、キオクシアだ。

ウェザーニューズ社のウェザーテックとキオクシアの記憶媒体技術、立場は違えどデータ活用でビジネスのDX(デジタルトランスフォーメーション)を進化させる両社。ウェザーニューズ社 テクニカルディレクター 西 祐一郎氏と、キオクシア SSD事業部SSD応用技術部 部長 濱田 誠が、気象ビッグデータ活用の今と、データ活用がもたらす社会の変革のかたちを語り合った。

天気はビジネスに直結する。雨による客足減少予測から長期予測で製造調整まで

──お天気アプリ「ウェザーニュース」を展開し、世界最大手の気象情報会社であるウェザーニューズ社ですが、そうした気象予測データはどのように、ビジネスに活用されているのでしょうか。

西:近年は情報通信技術を駆使して産業を変革、デジタル×リアル融合のビジネスを表す「クロステック」という言葉が話題にのぼりますが、ウェザーニューズ社の事業はまさにその中心を行くもので、気象データを活用して新たなビジネスを生み出す仕組みを、私たちは「ウェザーテック(WxTech)」と呼んでいます。

2020年6月から始まったウェザーテックサービスでは、従来5kmメッシュだった予測レベルを、1kmメッシュまで狭めることで精度を高め、さまざまな企業に役立てていただいています。

農業では、気象IoTセンサー「ソラテナ」を設置することで、気温・湿度・気圧・照度・紫外線・風向・風速・雨量の精緻なデータを得ることができ、根腐れや病気などによる農作物のダメージに、事前に薬剤散布判断などの対策が打てるようになりました。

また、昨年の需給調整市場の開設からより詳細なデータへのニーズが高まる電力市場向けには、需要予測や太陽光や風力の発電量予測を行うために必要な気象情報を電力会社に販売しています。

ドローンの安全航行のためにもそうした雨風のデータは不可欠ですし、停電リスクの把握、熱中症対策への活用など、事業に合わせたさまざまな活用例が存在します。ほかにも、天気連動広告では、天気に連動したクーポンの発行なども実現しています。

自然は刻一刻と変化し続けるものですので、観測データは膨大なものになります。技術革新の速度にもよりますが、それらをうまく活用して、100年単位での天候を予測することができれば、保険商品のリスク判断にも使えるでしょう。

つまり気象ビッグデータを活用するためには、AI、ディープラーニング、機械処理などの最先端技術が必要になります。当然、データを扱うのですから大容量の記録媒体は必須です。私たちはこれまで、ストレージコストを考えて過去データはオフラインで保存するか、廃棄していました。昨日の天気予報を知りたくなることなどないと考えていたからです。

しかし最近はそうした過去の気象データの需要が増えてきました。その膨大なデータから何らかの道を見出そうという企業が増えてきたのです。そこでウェザーテックではまず、過去データを提供するサービスから始めたのです。

──ウェザーテックで提供する天気予報の精度を高めるために、どのようなことを行っているのでしょうか。

西:基本的には観測地点の多さに、精度は左右されると思います。現在気象庁は観測装置「アメダス」を全国に1,300カ所設置していますが、ウェザーニューズ社はその10倍に当たる13,000カ所のデータを収集しています。

さらにアプリ「ウェザーニュース」のサポーターによる1日約2万通の写真投稿、18万通の天気報告があります。そうした圧倒的な観測網により精度を高めているのです。さらに通常は5kmメッシュの予測ですが、業界最高解像度1kmメッシュの細かさでの気象予測がウェザーテックで可能になっています。

──気象ビッグデータを運用するためには、やはりコンピューターの進化が鍵になると思いますが、キオクシアはどのような技術で進化を加速させているのでしょうか。

濱田:キオクシア(記憶+アクシア※ギリシャ語で価値)という社名には、人や社会が発するデータを記憶し、活用することで価値を生み出していきたいという思いがこめられています。それが“「記憶」で世界をおもしろくする”というキオクシアのミッションのもつ意味です。

私たちは1987年にNAND型フラッシュメモリを発明しました。小型で、電源を落としてもデータが消えず(不揮発性)、読み書きのスピードが速いという特徴を生かし、デジタルカメラやオーディオプレイヤー、スマートフォン、PCなどの記憶媒体として採用されたのをきっかけに爆発的に普及しました。

大容量化、高性能化の技術革新を経て、今ではフラッシュメモリを多数搭載したSSDのデータセンターでの活用が広まっています。これまでデータ活用の基盤となる記憶媒体は、磁気ディスクを使用したHDD (ハードディスクドライブ)が主流でしたが、応答速度や性能を重視する用途にフラッシュメモリが搭載されているSSDの使用が進んでいます。HDDに比べて低消費電力であるという利点は、データセンターの低消費電力化にも貢献しています。

ウェザーニューズ社など企業のデータセンターや、機械学習の現場でも広く使われているはずです。西さんがおっしゃったように、気象データは求められる解像度に比例して扱うデータ量も大きくなり、しかも、即時性が求められる予報において、膨大なデータを使った演算を速く行うという要求は、日々高まっているのではないかと思います。AIやディープラーニングを活用するようになると、さらに演算におけるメモリー負荷は上がります。一般的な方の目に直接触れることは少ないですが、私たちキオクシアは、そんなコンピューティングの進化をフラッシュメモリ技術で支えています。

西:日本には四季があり、災害大国でもあります。収集できる気象データがさまざまに増え、過去データも必要となると、大容量保存ができ、かつ早く取り出せる記憶媒体技術は欠かせないと思います。

「ウェザーニュース」のアプリは累計3,500万ダウンロードを超えています。たとえば一気に100〜200万人に地震速報を送信するとき、HDDでは時間がかかります。今はSSDの技術革新で、瞬時の送信が可能になりました。そうした高速処理のニーズは、さまざまな業界で必要とされていると思います。

気象ビッグデータ活用が未来社会を刷新する

──気象予測と記憶媒体、立場は違えど、どちらもビッグデータで社会経済を発展させようという試みに感じます。

西:見えなかったものを見えるようにする。それこそがビッグデータ活用の意義だと思います。データだけを提示しても、一般の人には何も見えないので、わかりやすく可視化する必要がある。それが情報技術なのだと思います。

濱田:そうですね。手間とコストをかければ、さまざまなデータを多数取得することができます。そこで課題となるのは、ビッグデータを誰がどう使うかということではないでしょうか。

現在、全世界で1年間に生成されるデータは80ゼタバイト (10の21乗)を超えると言われており、近い将来には200ゼタバイトに到達するでしょう*。しかしその莫大なデータのなかで、実際に活用されているのは5%にも満たないという試算もあるのです。 *Source: IDC Worldwide Global DataSphere Forecast 2021-2026 IDC #US49018922 (May 2022)

情報技術が進化すると、より多くの人が、より幅広いデータを活用する場面が増えてくるのではないかと思います。現時点ではコスト面を考えると、保存していないデータも、将来的には非常に役に立つ可能性もあるかもしれません。私たちは、未来のアルゴリズムにおいてもデータを活用できるように、記憶媒体に革新を起こし続ける挑戦を行っています。

西:ウェザーニューズ社のこれからの挑戦は、気象データと気象データ以外のデータとの接続にあるのかもしれません。たとえば熱中症予測は、周辺環境と個人の血圧、深部体温データの関係性などから判断したほうが、より正確だと考えるからです。

濱田:たしかに、携帯電話やスマートウォッチにもフラッシュメモリが使用されているので、採取可能で直ぐに使えそうなデータですね。

西:衛星リモートセンシングデータは、究極のビッグデータです。さらに解像度を高めると、見えていない細部が見えてくると思うのです。さらに人類は海中データ収集にも手が付いていません。今後過酷になるであろう自然環境に対しても、できるアプローチがまだあるのかもしれません。

濱田:日に日にデータの重要性が増していくばかりの現代社会では、データをどう使いこなすかが個人や企業、ひいては世界の運命も分けるでしょう。

そうした世界中各所でビッグデータを保存する場面、活用する現場で、力強いインフラになることがキオクシアの役割だと考えます。

今回、気象ビッグデータ活用のお話を聞かせていただいて、記憶媒体が担う役割の意義を再確認しました。私たちの技術革新が、人々の生活を豊かにしていくことにつながる。それこそが私たちが挑戦し続ける理由です。

気象ビッグデータの活用でウェザーテックを進化させるウェザーニューズ社と、記憶媒体の進化でビッグデータの活用を促すキオクシア。それぞれの立場は違えど、ビッグデータの活用で社会をより良くしていきたいという信念は通底していた。第4次産業革命とも称されるAIやビッグデータを用いた技術革新において、それを支えるインフラも革新を続けなければならない。ビッグデータ活用という文脈で、記憶媒体が担う役割は限りなく広がっている。

西 祐一郎(にし・ゆういちろう)

◎1993年株式会社ウェザーニューズ入社、システム開発カンパニープレジデント、WITHステーションCIO等を経て、現在はテクニカルディレクターとして、予報センターで開発の責任者を務める。

濱田 誠(はまだ・まこと)

◎キオクシア株式会社 SSD事業部SSD応用技術部 部長。SSDの技術マーケティングから製品戦略、顧客技術支援を担当している。

2022/11/25公開 ダイヤモンド・オンラインタイアップ広告より