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メモリ技術研究所

塩沢竜生

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キオクシア株式会社(KIOXIA)は「『記憶』で世界をおもしろくする」をミッションに掲げています。そんなキオクシアのメンバーは、「記憶」についてどのように考えているのでしょうか。1人ひとりがこれから目指していく「わたしの世界新記憶」をたどります。
今回登場するのは、メモリ技術研究所で次世代メモリの開発に取り組む塩沢竜生さん。印象深いご家族とのエピソード、塩沢さんが未来に残していきたい記憶についてききます。そして「仕事をとおして電力問題を解決したい」という目標について、教えてもらいました。

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2000年、東芝入社。システムLSI開発センター配属。08年、無線LAN LSI開発プロジェクトリーダー。10年、無線LAN内蔵SDカード “FlashAir™”を立ち上げ、13年よりNFC内蔵SDカード ”Mamolica™”用LSIの 仕様策定を行う。17年より東芝メモリ(現・キオクシア)へ転籍。システム技術研究開発センターに所属し次世代メモリシステム開発の取りまとめを行う。

新製品の開発で気づいた
「人とのつながり」の重要性

塩沢さんは、2000年に株式会社東芝へ入社し、同社ワークスラボ(事業部門 研究開発組織)に配属。2017年に東芝メモリ株式会社へ異動するまでは一貫して「無線LAN用LSI」(通信機能を備えた大規模集積回路)の開発に従事してきました。

20年近くに及ぶ社会人生活のなかで特に印象深い仕事は、2010年頃から仲間とともに行った無線LAN内蔵SDカード「FlashAir™」プロジェクトの立ち上げとのこと。新製品開発事業から生まれたFlashAir™は、無線LAN機能を搭載したSDHC/SDXCメモリカードで、カード単体で無線LANのアクセスポイントとして機能するため、FlashAir搭載機器同士のファイル送受信、あるいは、外部無線LAN機器を通じたパソコン・スマートフォンのFlashAir™へのアクセスを可能とします。FlashAir™は東芝グループのヒット商品となりました。

「私自身を含めて数人で始め、メンバーを増やしていった新規事業プロジェクトでした。入社以来10年間、研究開発の領域でずっと仕事をしていたため、新製品を生み出す仕事は個人的にとても新鮮な体験でしたし、相当な覚悟で挑んだことを覚えています。当初は製品づくりからマーケティングまで一貫して担当させていただき、人とのつながりの重要性を教えてくれた仕事でもありました」(塩沢さん)

もしも記録に残せていれば
——2つの記憶をひもとく

現代は記録が増え続けていく時代です。誰でも日常的にSNSを利用するようになった今、思い出をクラウド上に残すという行動が当たり前になりました。しかし1973年生まれの塩沢さんにとって「SNSに個人的な記録を残し、オープンに公開するようになった」というのは、驚くべき変化だったそうです。同時に「自分もあのときのことを記録できていれば……」と振り返ってしまうこともあるようです。

特に印象的な記憶として塩沢さんが挙げたのは、幼少期、家族で静岡県・浜名湖へ遊びに行ったときのこと。塩沢さんは何かの拍子に湖に落ちてしまい、そのときの“視覚的な記憶”が鮮明に残っているといいます。

「それが浜名湖だったのか、近くの海だったのか、今となっては定かではありませんが、水のなかを沈んでいき、水面が遠ざかっていく情景を鮮明に覚えています。『このまま死んでしまうのだろうか……』と、子どもながらに恐怖を感じました。でも、自分の記憶のなかでは、恐怖よりもきらきらと光る水面の美しさが上回っています(笑)。不思議なのは、自分のなかでは衝撃的な事件だったにもかかわらず、私が水のなかに落ちたことが両親の記憶には残っていないこと。弟もそのときのことを覚えているから間違いなく事実なのに、なぜか両親は覚えていないんです」(塩沢さん)

もう1つ、塩沢さんにとって印象深い過去の記憶は、当時同居していた祖母が作ってくれたサラダの味です。きゅうりとわかめに調味料を和えて手もみをしたサラダで「毎日のように食卓に並んでいたため、反抗期には正直嫌だったこともある(笑)」と、塩沢さんは述懐します。

「言葉ではうまく言い表せない独特な味でした。しかしその味は鮮明に覚えています。祖母が80歳くらいになって料理をしなくなってから、食べる機会がめっきり減ってしまいました。不思議なのは、あるとき祖母にそのサラダのことを話してみると、作ってくれたことをまったく覚えていなかった。その他の記憶はきちんと覚えているし、祖母もまだまだ元気だったのですが、なぜかそのことだけ覚えていない。実家の家族みんなでびっくりするとともに、少し寂しい気持ちが残ったことを覚えています」(塩沢さん)

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記録に残せれば、
人生がもっと豊かになる

自分は鮮明に覚えているのに、両親は覚えていない湖の記憶。そして、家族は覚えていていも、作った本人は覚えていないおばあちゃんのサラダの記憶……。2つのエピソードから塩沢さんが考えるのは「人の記憶はとてもあいまい。だからこそ、記憶を記録として残しておきたい」ということです。

「今であれば、思い出の写真や文章、レシピをSNSなどに残しておくことは簡単です。それによって、あとから想起することができるかもしれません。でも、自分だけが知っているきらきらと光る水面の情景や、言葉では言い表すことのできなかった祖母のサラダの味といった五感で感じ取った記憶を、そのままの情報量で残せるようになったとしたら、きっと人生はもっと豊かになると思うんです」(塩沢さん)

さらに塩沢さんは「10年前、FlashAir™の立ち上げに挑んだときの感情も残したかった」と話します。

「当時のメールなんかを見返すことがありますが、さすがにそこから感情までは読み取れません。もしもそれらが残っていて、それを今から引き出せるとしたら、現在遂行しようとしている仕事への活力になるかもしれないし、後進の育成にも役立つ可能性もあります」(塩沢さん)

塩沢さんが語ったように、当時は当たり前だったことも含めて、五感で感じ取った情報やそのときの感情をデータとして記録できるようになるとします。すると、自分と他人、あるいは過去の自分と現在の自分のあいだで記録を介したコミュニケーションが生まれ、新たな『記憶』として、別の価値が生じることで、社会が豊かになるということもあり得るでしょう。

「過去の記憶を紐解いて真っ先に思い浮かぶのは、楽しい記憶ばかりではないかもしれません。しかし私は特に、忘れてしまいがちな楽しい気持ちや前向きな記憶を記録に残したいと思っています。これからも次世代・将来世代メモリの研究開発という自分の仕事をとおして、『記憶』で世界をもっとおもしろくしていきたいです」(塩沢さん)

そんな塩沢さんの現在の仕事は、「次世代・将来世代メモリの実システムへの応用検討」「メモリシステムの将来予測と開発へのフィードバック」です。仕事をとおして、具体的にはどんなことを目指しているのでしょうか。

「サーバなどを設置・運用するデータセンターの電力問題を社会課題の1つとしてとらえ、我々の技術でその課題を解決したいと考えています。世のなかで流通する情報量の爆発的な増加にともない、すでにデータセンターの消費電力は飛躍的に増大しており、IoTデバイスがもっと増えていけば、やがて現在の総発電量を超えるとの予測もあります。

我々が研究開発を進める次世代メモリは、メモリやチップ、CPUとの連携により高効率化をめざすもの。結果的に、データセンターの大幅な省電力化に寄与します。世界の動向を見ても情報量が増え続けるのは必然。人々の“記憶”が増えていく時代に向けて、今後も次世代のメモリを開発していきたいです」(塩沢さん)

文:安田博勇 / 写真:伊藤圭

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