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先端メモリ開発センター

佐貫朋也

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キオクシア株式会社(KIOXIA)は「『記憶』で世界をおもしろくする」をミッションに掲げています。そんなキオクシアのメンバーは、「記憶」についてどのように考えているのでしょうか。1人ひとりがこれから目指していく「わたしの世界新記憶」をたどります。
今回登場するのは、先端メモリ開発センターで次世代メモリの開発に取り組む佐貫朋也さんです。「記録から記憶へ」というキオクシアのビジョンの策定にも関わった佐貫さんの、次世代メモリにかける想いについて話をききました。

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佐貫朋也
1999年、東芝入社。入社以来10年以上にわたりシステムLSIの研究開発に従事。その後、コンシューマー向け製品の企画開発などを経験したのち、先端メモリ開発センターにて次世代メモリの研究開発に取り組んでいる。2017年より東芝メモリ(現・キオクシア)へ転籍。

自由な社風に惹かれて入社。半導体開発に情熱を注ぐ

佐貫さんが東芝に入社したのは、1999年の春。それまで大学で固体物理学を専攻し、「その“ど真ん中”ともいえる半導体の研究開発にたずさわりたかった」と当時を振り返ります。

当初は大学院に進むつもりだったとのことですが、先輩や友人たちから、「どうやら東芝の半導体開発がおもしろいらしい。自分の好きなテーマを、自由に研究をさせてもらえるらしい」という評判を聞き、「そんな会社なら、ぜひ自分も」と就職を志望。採用され、「システムLSI(大規模集積回路)」の開発部署の配属となりました。

「さまざまな機能を持つシステムLSIは、論理を司るロジック回路とメモリで構成されており、情報機器の核となる部品です。入社当時から私の専門は、高性能トランジスタと混載型のメモリでした。製造・開発にはその時代における最先端技術が常に求められ、当時、東芝はIBM、Intel、TSMCといったメーカーと熾烈な開発競争を繰り広げていました」(佐貫さん)

「楽しさ」という原動力を思い出し、再び半導体開発の現場へ

入社から10年ほど経った頃、開発競争が激しさを増すなかで東芝のシステムLSI事業は徐々に見通しが悪くなり、規模を縮小することに。それでも海外メーカーとの協業開発に活路を求め、佐貫さんは1年間アメリカのIBMに出向しました。そして帰国後はシステムLSIの開発から離れ、半導体を利用した新しいビジネスを生み出すためのチームに入ります。

「体温計や活動量計、農業用のセンシングデバイスというコンシューマー向け製品の企画開発を行っていました。たとえば農業分野では、『ドローンを使って畑や田んぼを空撮し、センシングデバイスのデータを利用して作物の育成状況をAIに判断してもらい、栽培に役立てる』という、今でいう“スマート農業”のはしりのような研究をしていました」(佐貫さん)

しかし、農家の方々と触れあった経験をきっかけに、半導体そのものの開発に戻りたいという気持ちが芽生えたそうです。

「意外にも、新しいテクノロジーや高度なIT化を求めていない若手の農家の方が多いことにビックリしました。彼らはお金を儲けたいとか、手間をかけずに作業を楽にしたいとか、そういう目的のために農業をやっているのではなく、『自分がつくった安心で安全な野菜を、顔の見える人に届けて喜んでもらいたい。ただ純粋に楽しいから農業をやっている』というのです。そうした方々の気持ちや生き方を大切にしたいと思いました」(佐貫さん)

本当に必要とされているサービスや技術であれば、ユーザーは自分の意志で手に取ってくれる。何より、自分が最も興味をもってやりたいと思っていたことはまだ志半ばで、やり残したことがある――。こう考えて、佐貫さんは入社当初に抱いていた思いに立ちかえり、再び半導体開発の現場に戻ることを決意しました。

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技術革新の次なるキーワードは感情を重視した「メモリの記憶化」

2016年から佐貫さんが籍をおく「先端メモリ開発センター」は、フラッシュメモリの一大生産拠点である四日市工場内にあります。次世代メモリの研究開発と、その量産化の道筋をつけるための機関です。しかし、佐貫さんは「今後は開発に関わる一部の社員だけでなく、製造、営業、マーケティングなど、メモリ製造にたずさわるすべての人が、次世代のメモリのあり方を考えるべき」と力を込めます。

「1987年に発明されたNAND型フラッシュメモリは、『微細化』『多値化』『積層化』という技術革新を重ねて、大容量化により最小のビット単価の実現を追求してきました。現在の主力製品である3次元フラッシュメモリ『BiCS FLASH™』は、それまで平面(2次元)に並べていた素子を垂直方向に積み重ねることで(積層化)、サイズはそのままに記憶容量の大幅アップに成功した製品です。

しばらくは、積層数を増やしていくことで大容量化を継続できますが、それもいつかは限界を迎えます。無限にビルを高層化できないのと同じように、積層も無限にはできないのです。そこで、新たな開発の軸として行き着いたのが“記憶”というわけです」(佐貫さん)

データを蓄積するだけの「記録デバイス」から、人の心を動かす「記憶デバイス」へ――。
このキオクシアのビジョンの策定には、佐貫さん自身も関わっており、「大容量化」から一歩進んだ、メモリの進化の方向が示されています。

「たとえば、初めて訪れた国であこがれていた建物や景色の前で大切な人と撮影した写真と、スマホの操作を間違って撮れてしまった写真。これらのデータ容量は、ほぼ同じです。しかし、撮影者の“思い入れ”の量には雲泥の差があります。これまで“記録デバイス”を製造してきた私たちは、ユーザーの“思い入れ”や“心”というものを考慮できていませんでした。でも、そうした使う人の感情や気持ちに目を向けることで、メモリは大きく進化する可能性を秘めています」(佐貫さん)

メモリを使うたびに、過去の記録にふれるたびに、人は必ず何らかの感情を抱きます。単なる「記録デバイス」の枠を超え、そうした「記録と感情の関係性」にまで踏み込んだ「記憶デバイス」こそが、次世代のメモリのあり方だと佐貫さんは語ります。

「これから目指していく“記憶デバイス”には大容量化や積層化のようなわかりやすい目標はありません。研究開発にひたすら時間を費やせば答えが出るというものではなく、むしろ技術者とは別の視点こそが求められているのかもしれません。だからこそ、キオクシアのスタッフ1人ひとりがアイデアを考え、製品づくりに積極的に関わっていくことが大切だと思っています」(佐貫さん)

多様なニーズに応え、暮らしに大きな意味をもつ「記憶デバイス」を

汎用的なメモリの製造に特化するのではなく、「ユーザーの多様なニーズに応えるために、多品種の製造に対応」する必要があると佐貫さん。なぜなら「使われるシーンが違えば、メモリに求められる機能も異なってくる」はずだからです。では、キオクシアが志向する「記憶デバイス」はどんなシーンでの活用が考えられるのでしょう。

「発想のタネは、いたるところに散らばっています。特に、趣味やエンターテイメントの分野は記録と感情が強く結びつくため、“記憶の技術”が求められる領域かもしれないと考えています。たとえば私は相撲鑑賞が趣味なのですが、初めて国技館にいき、土俵のすぐそばで、力士の後ろから取り組みをみた経験は、忘れられないくらい衝撃的でした。

サッカーの試合中継ではコートのどこからでも映像を楽しめる多視点映像技術の研究が進んでいます。それと同じように国技館の土俵上の視点で、力士たちの取り組みを記録して鑑賞できるようになったらと思うと、ついワクワクします。もし開発したいという方がいれば、ぜひ協力させてください(笑)」(佐貫さん)

最後に、メモリ技術のこれからについて、あらためて語っていただきました。

「どんなにテクノロジーが進化したとしても、新しい発想を生み出せるのは人間だけです。今日まで進化を遂げてきたNAND型フラッシュメモリの技術を生かしつつ、20年先、50年先へとつながる新しいメモリ、新しい記憶のデバイスを全社員の力を合わせて開発していきたいです。キオクシアへの社名変更は、我々が生まれ変わる大きなきっかけとなると思います。人々の暮らしに、より大きな意味をもつもの、世の中をよりおもしろくするものを、どんどん提供していきたいと思っています」(佐貫さん)

文:安田博勇 / 写真:伊藤圭

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