“感情”さえも記憶できる未来をつくりたい ― わたしの世界新記憶 ― 戦略部提携戦略担当 大野真生

“感情”さえも記憶できる
未来をつくりたい ― わたしの世界新記憶 ― 戦略部提携戦略担当
大野真生

「『記憶』で世界をおもしろくする」をミッションに掲げる、キオクシア。そんなキオクシアの社員は、「記憶」についてどのように考えているのか。1人ひとりがこれから目指していく「わたしの世界新記憶」をたどるこのインタビュー企画に今回登場するのは、戦略部 提携戦略担当として、アメリカ・ウエスタンデジタル社との共同出資によるジョイントベンチャー運営に携わる大野真生だ。大野は、幼少期や社会人生活で得た「楽しかった記憶」「うれしかった記憶」を後生に伝えていきたいと話す。

大野真生

ウエスタンデジタル社とのJV契約をまとめる交渉人

キオクシアはアメリカ・カリフォルニア州に本社を置くハードディスクドライブおよびフラッシュメモリの製造企業、ウエスタンデジタル社(以下、WD社)と共同出資し、3つのジョイントベンチャーを運営している。なかでもキオクシアの四日市工場はWD社傘下・サンディスク社との共同投資による、世界最大級のフラッシュメモリの生産拠点として稼働しているのだ。このほか2019年には、岩手県北上工場でもWD社と共同で設備投資することを発表している。

こうしたジョイントベンチャーの事業運営およびWD社との契約交渉を含む対応全般に従事しているのが、戦略部 提携戦略を担当する大野。今の仕事に携わるようになった当時について聞くと次のような答えが返ってきた。

「戦略部提携戦略担当では法務的な知識、あるいは語学スキルが必要なこともありますが、私はもともと商学部の出身。配属当時は法務も語学も決して得意なわけではありませんでした。この仕事に携わるようになった最初の1〜2年目は、英語の契約書を前に辞書やネット検索を頼りに悪戦苦闘したほどです(笑)」

およそ13年前に東芝へ入社した大野は、入社当時、半導体事業部のメモリ事業における生産管理および予算策定に従事していた。入社7年目のタイミングで四日市工場でのジョイントベンチャー事業運営、予算・生産調整にかかわるようになり、今にいたる。

激励メールで、やりがいを実感

「特段、配属を希望していたわけではなかった」というジョイントベンチャーの運営、そしてWD社との契約交渉の仕事は「常に緊張感につつまれる仕事」だったというが、その過程では大きな達成感を得た瞬間もあった。

「とある難しい契約交渉がまとまったときのことは、とても良い思い出として残っていますね。その交渉をリードしていたのは、戦略チームでの私の上司だったのですが、その上司が会社上層部とのメール報告のやりとりのなかで、途中から私を宛先に加えてくれた。私はその交渉において実務担当者のレベルでしたが『宛先に追加したメンバーも交渉を頑張ってくれた』と、上司が気遣ってくれたんです。その後、会社上層部から激励のメールも届き、『私も戦略チームのメンバーなんだ!』と心から実感しましたし、そのときの感動は、今も決して忘れることがありません」

サンタクロースを探したクリスマスの思い出

そんな大野は、父親の仕事の関係で幼少期をアメリカ・ニューヨーク周辺で過ごしている。当時の記憶として今も深く脳裏に刻まれているのは、クリスマスの思い出。アメリカのクリスマスは、日本のそれとは異なり、家の玄関先はリースや電飾で彩られ、たいていリビングに本物の木で作られたクリスマスツリーが飾られていた。そして大野家ではツリーにサンタクロースへの手紙を置いておくと、次の朝、ツリーの下にプレゼントが必ず届けられていたという。

「もちろん私もサンタを信じていたので手紙を書きました。たしか4歳くらいのときには、サンタに遭遇するチャンスもあったんですよ。ある晩、お風呂場から突然『わっ!』と驚く父の声が聞こえたので、母とともにお風呂場に駆けつけると、父が『窓からサンタが見えた!』と大騒ぎしていた。その後しばらく、お風呂場の窓に張り付き、ずっとサンタを探しました……」

その後、プレゼントは届いたが、結局その目でサンタクロースを見ることは叶わなかった。

「その真相を両親に確認したことはありません。当然ながら、サンタを信じる幼少期の私を喜ばせようとした両親の“作戦”だったのでしょう。ただ、この記憶の延長線上にはもう1つちょっと苦い記憶があります。私には4つ下の弟がいるのですが、私が中学生くらいになった頃、弟にサプライズを仕掛けようとした母が、ふだん弟と仲の良い私に彼の欲しがっているおもちゃを聞いてきたんです……。完全に仕掛ける側に引き込まれた瞬間でしたね(笑)」

不可能を可能にするパートナー開拓に貢献したい

家族との幸せなクリスマスの思い出をはじめとして、大野は自身が胸躍らせたときの感情をよく覚えているという。さらに「忘れる」という人の記憶の特徴について次のように語る。

「人間の脳というのは不思議なもので、悲しかったこと辛かったことって意外とすぐに忘れてしまう気がします。もちろん、大規模災害や社会的な事件などで得た教訓はしっかりと記憶に刻み、後世に残さなければいけませんが、嫌なことを忘れられるというのは人の記憶の良い部分でもあると思います」

さらに大野は「でも人は、嫌な記憶とは反対の“良い記憶”を忘れてしまうところもある」としながら、次のように続ける。

「特に私が普段から感じているのは、自分の感情をゆさぶった“事柄”は後生に語り継げるにせよ、そのときの“感情”を誰かに伝達したり、共有したりするのが難しいという点です。仕事で激励メールをもらったときの達成感・喜び、あるいは、幼少期に家の窓からサンタを探したときのあの興奮。ほかにも、職場の大先輩の『頭の中心で考えろ』という言葉、両親から受けた愛情など、ポジティブな感情を数え上げればきりがありません。私はそうした感情を、自分の大切な人に伝えていきたい」

そのうえで、「記憶」の可能性について次のように話す。

「既存のテクノロジーでは不可能なことでも、新しくなったキオクシアでは記憶の伝達や共有を実現できる可能性を信じていきたいと思います。それを実現するのが次世代メモリなのか、あるいはもっと別の新しいテクノロジーなのか……。それは定かでありませんが、当社の技術力ならば十分に可能性はあるでしょう。私は戦略部の提携戦略担当として、それを実現する開発力を当社が持つためのパートナーづくりや、関係づくりを通して会社に貢献していきたいです」

戦略部提携戦略担当 大野真生

2007年、東芝入社。半導体事業部のメモリ事業における生産管理および予算策定に従事。2013年より四日市工場でのジョイントベンチャー事業運営、予算・生産調整にかかわる。2017年より東芝メモリ(現・キオクシア)へ転籍。2019年より現在の本社戦略部でジョイントベンチャー事業運営サポート、契約交渉・策定を担当。

掲載している内容とプロフィールは取材当時のものです(2019年10月)